春、にぎやかに咲く菜の花よりひと足早く、12cmほどの長さに切りそろえ大きく膨らんだつぼみを持つナバナが店頭に並びます。アブラナ科の菜類の花蕾(からい)と若い茎、葉を共に食べる季節感あふれる野菜です。元は房州(千葉県南部)の特産で知られていましたが、近年は、早生、晩生、多分枝性、耐病性(根こぶ病など)の品種改良も進み、晩秋から春先にかけて長く、独特の苦味と柔らかな食感を楽しめます。
土壌への適応性は広く、重粘土から砂質土まで栽培できますが、真冬に収穫するのですから、できるだけ日当たりの良い場所を選んでください。種まきの適期は9月上旬から10月上旬です。9月初めに種まきすると10月中旬ごろ花芽を分化し、収穫始めは11月中旬ごろとなり、うまく管理すれば3月上旬ごろまで収穫し続けることができます。
畑は早めに苦土石灰を全面にまき、よく耕しておき、元肥として良質の完熟堆肥と油かす、化成肥料を施しておくことが大切です。
種まきは図のように、128穴のセルトレイに、1穴当たり4~5粒まきとし、育つにつれて間引き、1本仕立てとし、本葉4~5枚の苗に育て上げ、畑に植え出すのが良法ですが、畑にまき溝を作り、じかまきして育て上げることもできます。いずれにしても、条間40~50cm、株間30cmぐらいの粗植えにし、分枝を多く出させるよう心掛けます。
追肥は草丈が20cmほどに伸びたころから収穫期にかけて、15~20日ごとに3~4回ほど行い、次々と良い脇芽が伸び、大きな花蕾が収穫できるように配慮します。
アブラナ科野菜の共通の問題ですが、生育中にアブラムシやコナガなどの害虫の加害を受けやすいので、発生初期に薬剤散布して防ぎます。収穫は途切れなく行われますので、収穫との関係をよく考えて、安全防除に努めましょう。育苗中や生育前期の草丈の低い場合には、トンネル状にネットやべた掛け資材を被覆するのも良い方法です。
収穫は、花蕾が大きく膨らみ、開花直前ぐらいになったころに行います。全体の茎の長さは10~12cmが適当です。短く切り過ぎると、後から発生する花蕾数は多くなりますが、細いものになりやすく、逆に長く切り過ぎると後から出てくる側花蕾数が少なくなり、収量としては少なくなってしまいます。
販売用としては、取り遅れないよう注意が必要ですが、自家用なら数輪ぐらい咲いても味はあまり変わらないので気にすることはありません。
坂木技術士事務所●坂木利隆
|